書評

哲学用語辞典の評価は?哲学初心者にとって道標となる1冊!

こんにちは、ゆーこーです!

今回の書評は『哲学用語図鑑ー21世紀を生き抜くための最重要科目を学ぶ一冊ー』です。

いや〜かなり面白かったです、300ページ近くあり読み応え抜群ですが、一気に読み耽ってしまいました。

本の要約をした後に概要と著者について紹介、そして感想と個人的に大事と思ったポイントを説明します。これ私向きだ!と気になった方はぜひ購入して読んでいただきたいです…!

要約

哲学では個別に意見が存在しているのではなく、一つの主張に対し反論や別角度からの主張を繰り返して練られてきたもの。古代では『万物の根源は何か?』という『この世界の存在』への問いに対して多くの哲学者が向き合い意見を出した。中世ではキリスト教を理解するための土台として哲学が扱われるが、近世・近代では『そんな世界を我々はどうやって認識しているのか?』と認識論に入る。そして現代では『認識した上で、世界はどんな構造でバランスをとっているのか?』『認識する上で、大切なのは言語なのでは?』との問いを立ててきた。

歴史上の哲学者が生み出した意見は、批判や肯定を繰り返しながら議論されて今にいたる。これを汲んだのか、本書は時代ごとに章立てされており、辞典とはいうものの時系列順で構成されている。章ごとに哲学史に関わった重要人物を紹介したのち、哲学を構成するために必要な知識や用語をそれぞれ解説している。そのため、時系列に沿って登場人物と重要単語を勉強でき、また忘れたときにピンポイントで読み返すこともでき、まさに辞典のように繰り返し使うことができる本である。

本の全体を把握する

本の概要

まず伝えておきますが、前述の要約はか〜なり無理がありますよね。というのも、『用語図鑑』というタイトルは伊達ではなく、一つ一つがバラバラに書かれているんです。

おばけ君
おばけ君
確かに後半は要約じゃなくて構成だったもんね
ゆーこー
ゆーこー
苦肉の策でしたッ!

普通は要約というと主張を軸にしますが、本書はなんといっても『図鑑』なので著者の主張はありません。むしろそれぞれの哲学者の提唱した主張がたくさんあるので、要約は無理でした。ごめんなさい。

 

本書の構成は全体を通して、古代、中世、近世、近代、現代とセクションが分けられています。哲学は時代ごとに扱うテーマが移ろっていくので、混乱せずに読み進めることができます。

またそのセクションの中で、前半はその時代に登場した人物の紹介(名前、生い立ち、主張や名言など)、後半はその人物たちが提唱した考え方を図を豊富に使って解説していきます。

例えば古代で言えば、前半でソクラテスやプラトンなどが紹介され、『無知の知』や『イデア』などの単語についての解説が1ページごとに図説されます。この解説がとてもわかりやすく、直感的に理解できて記憶もしやすいデザインになっています。

そしてこの1ページごとというのが重要です。最終ページには索引があるのですが、1ページごとに書いているため探しやすくなっているんです。普通の哲学書であれば探すのに手間がかかりますが、これだと一発です。まさに図鑑の役割を果たしてくれるものです。

著者の情報

こちらの本を書いたのは田中正人さんです。1970年生まれなのですが、大学名がすごい。『ロンドン芸術大学ロンドンカレッジ・オブ・コミュニケーション卒業』。なにそれ。

『ロンドン芸術大学』というのは芸術分野を中心としており、英国国立大学である6つのカレッジを合わせた複合体としての大学だそうです。そしてその中の一つのカレッジが『ロンドンカレッジ・オブ・コミュニケーション』だそうです。日本にそういった形態の大学がないのでピンときませんが、著名なデザイナーやクリエイターを輩出している由緒正しい大学です。

ヨーロッパの大学では教養として、芸術や哲学といった教養分野を日本とは比にならないレベルで勉強すると言います。どの記事か忘れましたが、夏休みの課題図書としてプラトンの『国家』を課題にされることが多いと目にしました。高難度すぎて日本じゃあり得ませんね。

そんな環境で育っただけのことはあり、本書では表面的な意味だけではなく、わかりやすく噛み砕いて教えてくれています。実感として理解してるから表現できるんだなと切に感じました。

読後の感想

自分勝手に点数をつけると90点です。かなり楽しめました。

まず特筆すべきは図の多さです。

哲学って抽象的なものばかり扱うのでどうしてもわかりづらいんです。「経験の仕方と理解の仕方は異なり〜」的な抽象概念に関することが続きます。イメージが湧かないものは理解するのにも時間がかかってしまいがちです。

でもこの本はさすが図鑑といったところ。圧倒的な図の多さで捉えにくさをカバーしています。単語の説明では紙面の半分以上はデザインに費やしていたりします。そんな本、なかなかない。でもこのおかげで難解な意味を含む単語であっても、感覚的に理解することができるようになっています。記憶にも残りやすいです!

哲学書はいくつか読んできましたが、本書のおかげで附に落ちた解釈も多々あって参考になりました。

ただ、1ページにまとめたため、どうしても解説不足な単語があったのも事実です。しかしそれは大目に見れる出来です。「この単語の意味ってなんだっけ?」と振り返ったときに思い出せるトリガーとしての役割は果たせるほどの情報は書ききっています。

また1ページと言う簡素さがテンポを生んでいてつながりを意識しやすくなります。哲学は流れを意識すると理解しやすいものなので、テンポが滞らないことは重要です。

初見の単語であってもニュアンスは理解できるので、他の哲学書でその単語に触れてなかったとしてもすんなりと理解できるメリットもありました。

「単語の説明というより単語の紹介だった」といった方が、本書独特のゆるい感覚は伝わりますかね。

哲学を学ぶというより、全体像から捉えて哲学の楽しみを知ろう!というコンセプトな気がしました。

個人的ポイント

僕なりに「ここ面白いな!」と感じた点をいくつか紹介します。

ヤスパース:限界状況

ヤスパースは限界状況に立たされた時、人間は真に人間らしくなると考えました。限界状況というのは死、罪、戦争、偶然の事故などです。確かにこう言った状況で挫折を経験すると、様々な葛藤が生まれます。

この時に神だったり自然だったり強い自分自身といった包括者に出会うことで、自分らしさを見出すことができる。でもそれだけでは足りず、同じ限界状況にいる孤独な他者と関わること(実存的交わり:愛しながらの戦い)で、初めて真の自分らしさが生まれる。そんな考えです。

面白いと思ったのは、これがヤスパースの壮絶な体験の裏打ちがあるからです。

この時代はナチスがユダヤ人を虐殺した時代でしたが、ヤスパースの奥さんはユダヤ人でした。それを指摘されたため、ヤスパースは大学教授を下ろされ、さらに奥さんは強制収容所に送られそうになります。二人は家に立てこもって立ち向かいますが、もう自殺するしかないと諦めかけた瞬間に、戦争が終わりに向かい、なんとか助かりました。

そうなんです。ヤスパース自身が限界状況に立たされて、妻と実存的交わりがあったからこそ、乗り越えることができたんですね。哲学者は自身の知識や経験を哲学に反映しますが、ヤスパースはまさにこの哲学のおかげで人生を乗り越えたのだな、と感慨深い思いでした。哲学は偉大ですね!

サルトル:「人間は自由の刑に処されている」

この有名な言葉を残したのは、ジャン=ポール・サルトルというフランスの哲学者であり文学者です。一見すると自由と言うのは良いことのように思いがちです。

しかしサルトルは自由は辛いものだと考えました。ハサミは切るために存在するが、人間には本質的な存在理由がない。だから何になることもできる自由さがある。しかし自由であることは不安を生み、自由な行動はすべて自分の責任になる。

僕たち人間は自由だけれども、だからこそいつも不安で責任に苛まれてしまうのだ。

このような考えを持っていました。なるほど、自由は「自分に由る=自分に責任がある」ともかけますからね、納得です。この気持ちを言葉にすると「人間は自由の刑に処されている」となるわけです。確かに刑と言っても過言ではない気がします。

この言葉、実は知っていたのですが腑に落ちない厄介なものでした。しかしこの本を読むことでサルトルの知識が大まかに理解でき、その理解の中で説明されたので文脈から理解することができました。このように知的好奇心が満たされるのが僕は好きなんです。

ちなみに、サルトルは「社会に参加して変えていこう!」という主体性を重要視しますが、残念ながら後に台頭してきた構造主義(構造の中でしか主体性は発揮できない)によって影響力を失い、相手にされなくなります。しかし最後まで社会のために命を尽くしたサルトルの葬儀には、5万人も出席したとされています。

まとめ

今回は『哲学用語図鑑』について説明しました。

まとめると本書は

  • 哲学者の情報や、哲学の単語や意味を時間軸に沿って理解することができる
  • 圧倒的な図の量で直感的に理解できる
  • 他哲学書を読んだ後でも辞書のように使える

そんな1冊でした。初学者が哲学の雰囲気を知るためにも、また勉強した人が頭を整理するためにも使えるお勧め本なので、ぜひご覧になってください!

それでは!